SSブログ

『The Flesh And The Fiends』(死体解剖記)(1959) [DVDレビュー]

(サイトの奥に塩漬けになっていた記事の救出再掲で、UK版DVDを購入したときのレビューです(^^;))


(日本のAmazonで扱いがないので、リンクはUKストアです。PAL版ですのでご購入の際などはご注意下さい)

隠れた傑作かも!/『死体解剖記』

ちょっと鑑賞してから時間が経ってしまったんですが、ピーター・カッシング出演作で購入した『The Flesh And The Fiends』(VHS邦題『死体解剖記』)の感想です。

1959年のモノクロ作品ですが、見出しに書いたとおり、これは隠れた傑作かも!と思いました。お話は実話を元にしています。時は十九世紀初頭。エジンバラで解剖学を教えているロバート・ノックス博士が、バークヘアという二人組から解剖用の死体を買っています。この二人がじつは墓荒らし。火葬ではないので、埋葬されたばかりの死体を掘り出しているのです。新鮮であるほど高い値がつくことから、二人は次第に身よりのないホームレスなどを殺して「納入」するようになり、それが露見して逮捕。じつは博士も死体が自然死によるものでないことに気付きながら買っていた・・・というもの。
ノックス博士がピーター・カッシング、二人組のうちの一人ヘアがドナルド・プレザンスでした。(この人が出ているとは知りませんでした。チャッキーみたいな顔が怖い!)

このDVD、英語字幕さえないのがちょっと困るのですが、以前図書館で借りて読んだイギリスの犯罪史の本にバークとヘアの話が出てきたので、ストーリーは問題なく追うことができました。本のほうでは、絞首刑になった犯人は自ら解剖用に献体されるはめになった・・・という落ちがついてたと思います。映画のなかでも、刑を執行される前に犯人が神父さんか牧師さんかになにか言う場面があって、そのへんに関連したことを言っていたようなのですが、充分に聞き取れませんでした。(^ ^;)

「傑作かも」というのは、これが単なるホラーサスペンスではなかったからです。ジャケットやコピーはホラーとして売ろうとしていて、カッシングも片目がつぶれた、少し不気味な顔になっています。このジャケット写真を見ると、博士が悪の権化のように見えるのですが、そこは複雑です。

博士は出所の怪しい死体を買いますが、医学教育のためには必要なことと割り切っています。墓荒らしから死体を買っていると噂になっているのか、医学協会らしき組織の仲間からも、バークとヘアが捕まる前から何やら責められています。(推測ですみません、せりふが聞き取れないのです(^ ^;))博士は罪悪感など見せず、非難を軽くいなしてしまいますが、のちに自分の行為の意味を思い知って苦しむ場面があります。

バークとヘアが逮捕され、ノックス博士を非難するデモ行進も起こります。医学協会にも呼び出されてつるし上げられますが、それでも堂々としている博士。その帰り道、浮浪児の少女に小銭をねだられて、持ち合わせがないのだとやさしく言います。でも家まで来るならあげられるよ、と。(ようするに、根はやさしい人物だというシーンです)
しかしこの小汚い女の子は「No thank you.」と断ります。ここでのせりふも完全には聞き取れないのですが、「あなたがドクター・ノックスだったら怖いもの」みたいなことを、たぶん言われています。(あるいはノックス本人だと知ってて、ついていったら解剖されちゃうもん、とか言ってるのか?)そしてぱっと走り去ってしまいます。

ここで初めて、ノックスは愕然とした顔をするのです。うまいなあ、と思いました。理詰めでいくら責められても自分を正当化できるけど、こういうことで感情が動いてしまうという…。

最後に博士は、講義の前に学生たちにスピーチをするのですが・・・そこが全部聞き取れたらなあ。シーン自体、博士が一番非難されていたときには学生がほとんどいなくなって、そのあとで学生たちが戻ってきた、という感動的なシチュエーションです。講義のシーンは何回かありましたが、朗々とした口調に聞き惚れました。

バークとヘアが被害者を殺すシーンなど、かなりショッキングだったりするのですが…(モノクロだし、今のホラーと比べるとそれほどすごい映像ではないんですが、なぜかすごく怖い。やってることの意味が怖いんですよね。文字通り「ぞっとする」シーンです)、そういうエジンバラの貧民街でのセンセーショナルなドラマと同時に、ノックス博士の周りで論議される、医学の両義性、原罪性やリスクもテーマになっています。臓器移植が問題提起している今の時代にも、充分訴えるところがあると思います。
ほかに ノックスの教え子と貧民街の女性、別のノックスの弟子とノックスの姪の恋愛なんかも盛り込んであります。

…というわけで、このノックス役、フランケンシュタイン系統のキャラクターではありますが、紳士的な態度の下に隠れた葛藤がよりリアルで、カッシングのあたり役の一つではないかと思いました。
(フランケンといえば、足の不自由そうな浮浪児役で出てきたヒトは、フランケン一作目で、思春期のフランケンシュタインをやってたヒトだと思います。医師仲間の一人は、やはりフランケンで食堂のオヤジさんをやってたヒトでした。見知った顔が出てくると、「これは映画なんだから」と思い出せて、なんか安心します(笑))

DVDには、イギリス公開版と、より刺激的なシーンが一分ほど追加されているというヨーロッパ公開版が収録されていました。それに予告編と、アメリカ公開版のオープニング、公開時の広告画像など。なんとなくマニアックに充実していて「やっぱり『隠れた傑作』扱いなのかも」、と思わせます。日本での未DVD化はほんとに残念!ぜひぜひレンタルで見られるようにしてほしいですー!!

 


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。